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天国語 荻 原 忠 敬
- 桃に生れ桃に生業(なりわい)桃に死すゆたかなるかな桃との対話
- 実の色が朝の葉叢に見え初める六月の四時桃椀ぎ始む
- 桃若木広ごる村の一角に老木ばかりとなりたるわが畑
- 桃の木のわが剪定をほめながら妻はひたすら枝を集める
- 三食後を眠り眠ってなお眠し死とは眠気の先にあるらし
- 老翁と言いてむべなる八十歳 一歩一歩を手摺りに頼る
- 蹲踞に積もりゆく雪眺めつつゆっくり退屈八十路の時間
- 酷暑日の昼というのに吉宗が疲れを見せず人を斬りゆく
- 年老いて今日も開けるパソコンに淫画映り来これもまたよし
- 日に30本吸いしあり現身もいずれは荼毘のひとすじの煙り
- シンプルな一汁二菜念頭にこの先八年米寿を目指す
- 烏克蘭(ウクライナ)の漢字表記を憶えたり 裏痔見腐沈(ウラジミールプーチン)なども併せて
- 開拓団集団自決の業の火を脳(なずき)に焼きて命老いゆく
- 前方に夕映えの富士想い出の人を浮かばせまた消しながら
- 近藤勇(こんどう)と板垣退助(いたがき)が戦争(いくさ)せし峡を令和の鹿が並びて歩む
- 一人娘へ学費振り込む張り合いを卒えてからはや三十年なる
- 石板と石筆世代のまなこにはランドセルにゆくタブレット眩し
- 八歳児のお年玉へのお返しは「♬・・億、兆、京、垓(がい)・・」とう唄なりき
- 赤褌添え百歳(ひゃく)まで生きよとて教え子よりの傘寿祝は
- 天国語デジタル会話学習機欲しいと思うことありこのごろ